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環境問題を口実に原発を推進する菅首相

菅義偉首相が首相に就任してから40日も経って本格的な論戦を含む臨時国会がようやく開かれ、昨日、菅首相は所信表明演説を行いました。

政権が交代すると霞が関としては予算を組み直す必要があるので、国会を開いて論戦を行うには準備のために一定の時間がかかることは理解できますが、それにしても40日というのは長すぎて、首相は国民や野党に向かい合う気が無いのではないかという印象を受けます。

演説全体の印象に関しては、「「自助・共助・公助」そして「絆」」という社会像は無理があると感じられる他、国際問題に関しては「安保理改革を含む国連改革や、WHO、WTO改革などに積極的に取り組む」というものの、何が問題でどうしたいのかは言及がありませんでした。

その上で、私が最も問題と思ったのは以下の2点です。①コロナ対策が最重要課題だと言いながら、コロナ感染症の拡大抑止に対して「爆発的な感染拡大を防ぐ」というだけで何の具体的な対策も示していないこと、②2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすると述べたが、「安全最優先で原子力政策を進める」として原発推進の継続を表明したことです。

菅首相がコロナ感染症拡大抑止対策に対して無関心なのは許せません。今後冬になって感染が再び拡大する可能性が十分あるにもかかわらず、それに防ぐために政府としてどのような具体的対策を行うのかプランを示さないことは非常に無責任です。それに付随して、制度としての不備が散々指摘されているコロナ特措法は改正を行うべきと考えますが、菅首相にその意欲があるようには見えません。40日間も準備期間があったのにいったい何をやっていたのだろうかという感じです。コロナ対策が最重要課題というのは嘘でしょう。

また、経産省がゴリ押しした海外での原発受注事業が総倒れになるなど、安全性を担保するためのコスト増から原発が既に経済的合理性を失っている中、原発の再稼働に固執する姿勢を変えないでいることも看過できません。2050年における再生可能エネルギーやカーボン・オフセットエネルギー、そして原発の電源構成比率目標を明確にしなければ、大手電力会社により再エネつぶしが激しくなることは目に見えています。結局、火力発電への依存は続く一方で原発の比率が経産省が2030年代の目標である20-22%まで引き上げられることが十分考えられます。なぜ、菅政権は再エネやカーボン・オフセットエネルギーで構成比率100%を目指すと言わないのでしょうか?

発電所の維持や更新に必要な投資の確保を名目に経産省が主導して創設された「容量市場」において、7月に実施した初めての入札結果が先日公表されましたが、これが高すぎると新電力を含む小売り電気事業者から反発が起きています。この「容量市場」に関しては、現在の火力発電所の大半を所有する大手電力会社が再エネの普及により経営基盤が悪化することを避けるために作られたとの指摘も多いのです。経産省・大手電力会社・原子炉メーカー・製鉄会社・ゼネコンら原発への依存度が高い産業(労使双方)による原発利益共同体にメスを入れなければ、再エネを主力電源化することは不可能でしょう。

これから、12月頭にかけて臨時国会において与野党間で論戦が行われることになりますが、野党は日本学術会議問題に加えて上記のコロナ感染症対策とエネルギー問題について政府を厳しく追及すべきです。

残念ながら、①感染症予防対策については、コロナ特措法の改正については立憲民主党・共産党・社民党は積極的に動くとは思えないし、②の原発ゼロ(再エネ比率100%)については、親原発労組の支援を受ける国民民主党は反対するし、これらの労組が影響力を持つ連合から支援を受ける立憲民主党の対応も不透明になる可能性があります。

ここで、社会民主進歩党は、主要政策において①に関しては感染抑止対策の徹底と特措法を改正して休業補償と罰則を伴う休業命令を導入することを掲げ、②に関しては原発ゼロ基本法の制定・2050年代のできるだけ早い時期において温室効果ガスゼロを目指す・経産省を分割し、脱原発推進体制を固めるために環境エネルギー省を創設することを掲げています。

野党が政権を取るためには、自民党政権に対峙する姿勢を明確にするとともに、非常時においても国民の命を守るためにしっかりとした法整備を進める姿勢を示すことが不可欠ではないでしょうか。





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