自民党の派閥の裏金問題をめぐり、3月1日、安倍派の幹部4人が衆議院の政治倫理審査会に出席し、いずれも裏金づくりに関しては「一切関与していない」と主張して、自身の関与を否定しました。特に、安倍派の「事務総長」なるものを務めた西村前経産大臣、松野前官房長官、高木前自民党国会対策院長の3人は、「会計には関わっていない」、「収支報告書」を見たことが無いなどと酷い弁明を繰り返しました。
これは、会社でいえば、取締役が会社の決算書を見たことが無いと言っているのと同じです。会社が粉飾決算をやっていたわけですから、善管注意義務で訴えらえる可能性が高いでしょう。
ここで、注目すべきは、他の派閥でもそうですが、「事務総長」とは別に「事務局長」が存在するということです。「事務局長」は、派閥の会長や事務総長など派閥幹部の議員の秘書が務めており、「事務局長」が政治団体である派閥の会計責任者となっています。政治資金規正法では、政治団体に「は代表者」とは別に「会計責任者」が設けられています。政治資金規正法の長い条文を見ればわかるのですが、会計責任者の法的責任は重く、政治団体の会計に不正があった場合に会計責任者が起訴されるケースは一般的です。
つまり、何かあった時に、自民党の派閥においては、政治家の責任逃れをするために、「事務総長」と「事務局長」が分けられていると考えられます。国会議員の秘書は、議員との間に雇用関係があり、会社とは違って議員は簡単に秘書を解雇します。なので、議員の言うことは何でもきくというのが永田町では当たり前であり、何かあった時には議員事務所の「番頭」役の長老秘書が議員に代わって泥をかぶる役割を求められていると言えます。
しかし、不正をおこなった政治団体の代表者である議員本人がおとがめなしというのはあまりに不条理で、法律がモラルハザードとパワハラとを横行させていると言えます。
当然今回の件を受けて、政治資金規正法を改正して、不正が生じた場合、政治家本人(「公職についている者や公職になろうとする者」)への「連座制」適用を求める声が強まっています。しかし、そもそも、政治家本人が不正を指示してきた可能性が高いのに会計責任者たる秘書を第一に罰する現行法は抜本的に見直す必要があるのではないでしょうか。
端的に言えば、政治資金規正法の「会計責任者」自体を廃止すべきです。代表者が会計責任者であることを明記し、実際の会計実務を行っているものを「会計事務担当者」とすればよいでしょう。政治団体には、特定の政治家を応援する「後援会」がたくさん存在し、その場合の代表者は政治家本人でないケースも多いですが、それとて、代表と会計責任者を分ける必要性はないのではないでしょうか?