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「削減」ポピュリズムに騙されてはいけない

広島県の安芸高田市で2020年8月に就任した石丸伸二市長と市議会の対立が激化しています。石丸市長は6月3日、市議会定数を半減するための条例案提出を議会側に伝えました。安芸高田市の市議会議員の報酬は年約600万円とのことですが、この条例案では現在16の定数を8に半減することを求めています。

石丸市長は21年1月、「外部のアイデアを取り入れたい」と、転職サイトで2人目の副市長を全国公募し、東京の一般社団法人に所属する人物が内定しましたが、市議会は財政難などを理由に3度反対にまわり、さらに、副市長の定数を2人から1人に減らす条例改正案を賛成多数で可決しました。その結果、副市長の定数は1人になり2人目の副市長を設置すること自体が不可能になりました。

肝いり人事が封じられた石丸市長は「議会の暴走が極まった」として、「議会が是としたロジック、それをそっくりそのまま運用すべきだ。y=1/2xの関数だ」というのが定数半減の理由だと明言しています。

しかしながら、議会の定数は「適正性」から判断されるべきものです。多数決を行うのには3名以上の人数が必要で、それを上回る数に関しては、人口何人あたりに一人が適正か、さらに地理的条件や合併前の各自治体の利害関係などを考慮して決めるべきものです。議会の定数や議員報酬が問題と感じるならば、最低でも「議会適正化委員会」などの諮問委員会を作って十分な検討を行った後に、委員会の答申に基づいて案を決めるべきしょう。市長の半減案は自分の案が潰されたことへの報復を(市町曰く)議会と同じ方法で取っているだけのもので、非常に幼稚な動機に基づいているとしか言いようがありません。如何に議会の側にも問題があろうとも、このような乱暴な行動を取るべきではありません。

ネットでの意見を見ていると、「市議の報酬が高い」、「定数が多い」、「市議は働いていない」などとして石丸市長の意見に賛同する声が圧倒的に多かったのですが、私は、「半減」の是非を真剣に考えることなく「削減」ならとりあえず賛成するという風潮を非常に危惧しています。こう言った判断は日本維新の会の「身を切る改革」なるものを雰囲気で支持することと同じですが、あえて有権者に対してもっと真剣に考えてほしいと言わざるを得ません。

私は、かつてある有権者の方から「市議会や県議会の定数を半減すべきだ」と唐突に言われ、「何故半減なのですか?」と聞き返したところ、「彼らは働いていない・議員は役に立っていない。役に立っていないのならば、半減してしまえば良い」と言われ、面食らったことがあります。

今となっては、「逆にどういう状況ならば役に立っていると感じるのですか?」と聞いてみるべきだったと思いますが、「役になっていないから、予算がないから」などという理由で「半減」を何度も続けていけば、議会などいらないということになってしまいます。議会が無くなれば首長の暴走を止めるが機関がなくなり、首長の独裁を認めることになります。

だから、こういう小さな政府志向のポピュリズムには断固として立ち向かうべきです。政治に必要なのは「削減」ありきではなく「適正化」です。「身を切る改革」は、議員定数と議員報酬の削減から始まりますが、それが公務員バッシングに代わり、人件費削減のために過度な民営化や派遣会社への業務委託を進める結果、本来必要な正規雇用の公務員が確保できなくなり、いざというときに役所が機能しなくなります。それだけでなく、派遣会社からの大幅な職員受け入れは、非正規労働者増、つまり民間部門の給与低下につながり、経済のデフレ圧力を強めて「身を亡ぼす改悪」に終わるのです。

「削減」ポピュリズムに騙されてはいけません。脱ポピュリズムの政治、私たち進歩党は「適正化の政治」を訴えます。





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