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G7サミット「入会」基準を客観化すべきだ

イギリス政府は、今年6月にイギリスで開催されるG7サミット(先進国首脳会議)に、韓国、オーストラリア、インドに加えて南アフリカをゲストとして招待すると発表しました。南アフリカを追加で招待した背景としては、南アフリカで確認された変異株への対策などについて情報を共有することが有益だと判断したことがあるようです。

しかし、どの国を新たにG7の枠組みに加えるべきかについて、客観的な基準を示して議論された形跡がなく、このことは非常に良くないと考えます。バイデン米政権が目指している公正な世界秩序を作る点から考えて、サミット「入会条件」は客観的にする必要があり、今回、私は客観的な基準を考えてみました。

G7拡大の背景

元々、日、米、英、仏、西独の5か国(G5)で首脳会議を開催することが決定されていましたが、実際に1975年に開催された第1回先進国首脳会議では5各国に加えてイタリアが参加したためにG6となり、翌1976年の第2回先進国首脳会議からカナダが加わりG7となりました。さらに、1998年のサミットに当時のクリントン米大統領が当時のエリツィン露大統領を招待し、2014年のロシアによるクリミア併合まではロシアもサミットに参加していたためG8と呼ばれていました。
一方で、近年ではBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)諸国の台頭を背景に経済問題や地球環境問題に関してG7では対応できない課題が多くなってきたことから、先進国に新興国を加えた主要20か国の集まりであるG20がG7よりも重要視されるようになってきました。

しかしながら、中国とロシアにおける人権侵害や民主主義弾圧、さらに対外拡張政策が看過できないレベルまでに達していることから、G7の枠組みが再び見直されつつあります。今回、4か国が招待されたのは、韓国とオーストラリアは先進民主主義国家としてG7のメンバーに加えることが適切ではないかいう考えと、中露をけん制するために新興国でも人口・経済規模が大きくそれなりに民主主義国家であるならばG7に代表されるような西側陣営のメンバーとして迎えるのが得策ではないかという思惑があると思われます。

表1:IMF(国際通貨基金)による2020年GDP(総額)上位国ランキング

G7の特徴

G7諸国の共通点は、人口・経済規模が大きな先進民主主義国ということになりますが、この定義は、GDP(国内総生産)の額が大きく、一人あたりGDPも高く、人口も一定レベル以上あり、民主主義が守られている国である言い変えられるでしょう。
表1はIMFによる2020年の国別のアメリカ合衆国ドル建ての名目GDP(予想値)を上位からリスト化したもので、10億米ドル以上の国と南アフリカのGDP(単位は百万米ドル)、人口(単位は百万人)、一人あたりGDP(単位は米ドル)を掲載しています。なお、表1に掲載されていないGDP17位のオランダと16位として掲載されているメキシコの間には、GDP(総額)に開きがあり、10億米ドルという線引きは現実的妥当性があると考えます。

表2:GDP(総額)上位国の民主主義指数

そして、表2は イギリスのエコノミスト誌傘下の研究所、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が発表した2020年版の民主主義指数(Democracy Index)を、GDPが10億US米ドル以上の国と南アフリカについて掲載したものです。この民主主義指数は民主主義のレベルを「完全な民主主義(Full democracies)」(8-10ポイント)、「欠陥のある民主主義(Flawed democracies)」(6-7.9ポイント)、「混合政治体制(Hybrid regimes)」(4-5.9ポイント)、「独裁政治体制(Authoritarian regimes)」(0-3.9ポイント)の4つに分類しています。表2ではに掲載されている中で、政治体制が「独裁政治体制」に分類されているのは、中国とロシアだけで、この2国が主要国の中で特異な政治体制にあることが分かります。

G7の中で最も人口とGDP(総額)が少ないのはカナダですが、カナダが初めて先進国首脳会議に参加した1976年当時の人口は2400万人弱でした。そして、G7の中で最も一人あたりGDPが少ないイタリアの2020年の値は約30,000米ドルです。また、2020年の民主主義指数がG7の中で最も値が低いのもイタリアで、その値は7.74です。

主要先進民主主義国の条件

それゆえ、仮に先進国首脳会議参加の条件を、人口が2500万人以上、一人あたりGDPが30,000米ドル以上、民主主義指数が7.5以上とすると、G7以外の国では韓国とオーストラリアがこれに該当します。それゆえ、この2か国は先進国首脳会議の正式メンバーとして加えられるべきでしょう。スペインに関しては、IMFの統計では一人あたりGDPは26,832米ドルですが、パンデミック以前の2019年では、スペインの値が韓国のそれと同等な統計もあり、民主主義指数の高さから考えて、将来的には先進国首脳会議の正式メンバーとして加えられるべきでしょう。同国は現在G20のメンバーにさえなっていませんが、これは同国の人口や経済規模から考えて不当な扱いであると言えます。

主要民主主義国の条件

次に、G7を主要先進民主主義国の集まりから「主要民主主義国」という枠組みに変えるとしましょう。主要という意味をGDP(総額)が一定数以上の国でそれなりに民主主義が守られている国家であると定義すると、GDP(総額)が10億米ドル以上の国で民主主義のレベルが「欠陥のある民主主義」以上(6ポイント以上)の国であると言い変えるのが妥当でしょう。すると、G7以外にインド、韓国、ブラジル、オーストラリア、スペイン、インドネシア、メキシコが該当し、南アフリカは該当しません。
それゆえ、ブラジル、スペイン、インドネシア、メキシコがサミットに加わらないのはアンフェア(不公正)だと言えます。スペインを除けば、これらの国が招待されていないのは大統領が対中関係や新型コロナ感染症対策をめぐって他のG7首脳と意見の隔たりがあるからかもしれません。

客観的で公正な「入会基準」の必要性

しかし、客観的な条件を満たしているように見える国が招待されずに、満たしていないように思われる国が招待されるのは、G7という存在に対する発展途上国の反感を高めるだけです。個人的には、南アフリカの変異株対策について話すという目的で専門家でない南アフリカのラマポーザ大統領をわざわざ呼ぶことに必要性があまり感じられないのですが、地域バランスを取ってアフリカ大陸から一か国は呼ぶのが望ましいというのであれば、サミットメンバーに各大陸最低一民主主義国家という地域枠を作るべきです。
一方で、「主要新興民主主義国」に関して、対中関係や新型コロナ感染症対策で合意できないような首脳をサミットに呼びたくないのならば、事前にサミットの議題と合意目標を公に提示し、対応可能であるかを打診すべきです。

G7が今後も世界をリードしていきたいと考えるならばサミットの入会条件は公正で客観的にする必要があり、そうでなければ、閉鎖的なサークルであるG7は存在自体が差別的であり、G7の主張は発展途上国にとって説得力があるものにならないでしょう。G7が変わらなければ、中共の対外膨張を抑えられない可能性があることを我々はよく認識すべきです。

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