ブログ

君主制国家でも大統領制の実現を

9月6日に就任したばかりのリズ・トラス英首相に関して、新政権の目玉政策として発表された大型減税策「ミニ・バジェット」が金融市場の混乱を招いた結果、早くも同首相への辞任圧力が高まっています。トラス政権は、大型減税策の要だった所得税率45%撤廃案を撤回し、さらにボリス・ジョンソン前政権が決めた法人税引き上げの中止を撤回すると発表しました。トラス氏は陳謝した上で首相辞任は否定したものの、最新の世論調査では与党・保守党の支持率は20%という記録的な低水準となり、最大野党の労働党(支持率56%)との支持率の差は過去四半世紀で最も大きくなっています。

さて、政治制度に関してイギリスと日本を比較した場合、事実上、両者は議院内閣制を採用する立憲君主制国家という共通点があります(天皇は憲法で元首と規制されていないことから日本は厳密な意味での君主制国家ではないとの見解もあります)。議院内閣制の発祥地であるイギリスでは戦後、アトリー政権以来17の政権が誕生していますが、五年以上政権が継続できたのは、アトリー、マクミラン、ウィルソン(第一次)、サッチャー、メージャー、ブレア、キャメロンの7政権だけで、ブレクジットの国民投票の結果を取り退陣したキャメロン政権以降、メイ、ジョンソン両首相とも3年程度で退陣しており、今回、トラス氏が短期で退陣すれば3回連続して短命政権が続くことになります。

日本やイタリアほどではないにせよ、議院内閣制において国のリーダーたる首相の在任期間が短期になりやすいのは、大統領と比較した場合の首相の権限の弱さにあるのは明らかです。直接公選で選ばれた大統領や知事は基本的に弾劾を受けなければ任期期間中の地位は保証されますが、首相は基本的に最大与党の内部だけの合意で選ばれ、議会で不信任案が可決(これは出席議員の過半数で通ってしまう)されれば辞任するか議会を解散しなければなりません。政権の支持率が低下したことにより次期党首選で勝つ見込みがないと見込まれた場合や野党が提出した不信任案に関して与党内から同調者が出て可決される可能性が高いと見込まれた場合、早晩首相が辞任に追い込まれてしまうのが国を問わず世の常であると言えます。

ドイツのように「次の首相候補を選出した後にしか内閣不信任案を提出できない。逆に首相の信任決議が否決された時以外、内閣は議会を解散できない」とする建設的不信任案制度を導入すれば、議院内閣制の下でも政権の短期化は抑制できるかもしれません。しかしながら、建設的不信任案制度の導入には憲法の改正が必要ですし、どうせ憲法を改正するならば、そもそも何故、国のリーダーを国民が得られるようにしないのかという新たな疑問がわいてきます。君主制の国家だったイギリスがたまたま、国王が議会の最大会派の代表を首相に任命したという慣例が、他の君主制国家で法制化されて広まっただけで、この慣例に従うことが21世紀の現在においても最も合理的な選択だとは言えないでしょう。

ならば、首相を国民からの直接投票で選ぶ首相公選制を導入すればよいと思われるかもしれません。イスラエルは実際にかつてこの制度を導入していましたが、首相を選ぶ方法は大統領制国家で大統領を選ぶのと同じ方法をとったものの、首相を退陣させる方法は議院内閣制国家で用いられている内閣不信任案(議会の出席議員の過半数で通ってしまう)が継続して用いられました。同国では選挙において比例代表制が取られているため多党制になっており、その結果連立政権が形成され続けている状況において、首相公選制導入によりかえって政権運営の不安定性が増大してしまいました。結局、導入から5年も経たずに首相公選制は廃止されてしまう結果に終わりました。

では、公選された首相に対して大統領や知事の任期保証を行えばよいと思われるかもしれません。確かにその通りですが、それでは実質的に大統領と変わらないので、あえて首相と呼ぶ必要はないのではないでしょうか?

仮に日本など(事実上の)君主制国家で大統領制を導入した場合、元首たる(的存在である)国王または天皇と大統領が一緒に存在するのはおかしいと思う方もおられるかもしれません。しかし実は、世界には元首が二人以上共存する国がいくつか存在します。イラン、サンマリノ、アンドラがそうで、スイスの元首は合議体である連邦参事会であり、同国の連邦大統領は元首ではありません。これらの例の中でも特筆すべきはイランで、イランは大統領の上位に最高指導者が存在し、最高指導者は元首とされる一方、行政府の首長たる大統領も国家元首とされる職能の一部を有しており、諸外国からは一般的に両者が元首としての権能を分有していると見なされています。この関係を日本に当てはめれば、天皇を国民統合の象徴としての元首的存在、大統領を政治的元首的な存在とみなせば良いことになります。

重要なのは、国民の一票で国のリーダーを選べ、リーダーの任期が保証されている大統領制の方が議院内閣制より機能的に優れている以上、より優れている制度を採用することが合理的だということです。皆さんのお住いの地域の知事や市区町村長は事実上その行政区域の大統領ですが、選出方法が直接投票ではなく議会による選出となったら反対する声が圧倒的になるのではないかと思います。

これまで、立憲君主制の国で議院内閣制が取られていたからと言って、そのような慣例にとらわれる必要はありません。私たち進歩党は天皇と直接公選の大統領が共存する日本型大統領制の導入を訴えていますが、君主制と共和制が共存する新しい政治制度を日本がつくることは、日本の政治文化の成熟を内外に示す契機になるでしょう。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


PAGE TOP
RSS
Follow by Email
YouTube
YouTube
ページトップに戻る