茨城県城里町の上遠野修町長と兵庫県神河町の山名宗悟町長がそれぞれ、医療従事者や高齢者に該当しないのに新型コロナウイルスのワクチンを優先的に摂取したとして非難を浴びています。
最初に明らかにしたいのは、私は少なくとも、政府の首長(国と地方政府両方の)とナンバー2(副総理・副知事・副市長など)はその地域の誰よりも優先して接種を受ける権利があると考えているということです。理由は明快で、首長がコロナ(特にインド変異株)に感染して死亡したら行政に大きな混乱をきたすからです。このような方針はアメリカなど他の国を見ても一般的なものだと思います。それなのに一部マスコミが「上級国民」などとレッテルを張って批判するのは筋違いであり、記者のレベルを疑わざるを得ません。権力者として優先されるべき事項についてとにかく批判すればよいと思っているのは非常にポピュリスト的であり、社会的に望ましいことではありません。
問題なのは、例えば上遠野町長が「接種会場は医療機関として登録を受けており、管理責任者の私も医療従事者に準じる」と会見で話したように、自分が医療従事者に該当すると自らに都合がよい解釈をした点です。上遠野町長は「予定者にキャンセルが出たので廃棄を避ける必要があった。コロナ対応で指揮をとるべき町長が感染すると混乱が起きるので、それを避けるために接種を行った」とだけ述べるべきだったと思います。
ワクチン接種が進むにつて、今後もこのような事例が発生することは十分考えられます。一番問題なのは、菅政権が国民へのワクチン接種が具体化してから相当な時間が経つにもかかわらず、(国と地方政府両方の)要人への優先接種について方針を決定していなかったことです。どこまでを要人とすべきかは議論になるかと思いますが、それらを含めて地方自治体に丸投げというのはいかにも無責任です。
大阪府の吉村知事は、取材に対して「首長だから早くというのは違うんじゃないかなと思う。ワクチンが不足している中では首長もルールの中で接種することが重要だと思う」と発言しました。これに対しては府民受けを狙ったポピュリスト的発言との発言も出そうですが、首長がワクチン接種を我慢した結果、インド変異株に罹ってしまったということになれば冗談では済まなくなります。
国は国と地方の政府要人(野党も含めて)の優先接種に対する方針をつくるべきで、加藤官房長官が「公平性に反することがあれば誠に遺憾だ」、「(個別の事案に関して)詳細は把握していない」などと他人事の様な発言をするのは許させることではありません。そもそも、菅首相は今年3月に第一回目のワクチン接種を受けていますが、現在72歳の首相は、医療従事者であることの有無と年齢だけを考慮すれば最優先されるべき対象ではないはずです。
明確かつ客観的な基準を作りそれを守るという近代的意識が欠如していることが安倍-菅政権の最も悪い点の一つとして挙げられると思います。それが今後も続くと思うと腹立たしい限りです。