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2024年能登半島地震と津波:教訓と今後の行政的課題について

2024年は元旦に能登半島地震が発生し、2日には羽田空港で日航機と海上保安庁の航空機が衝突を起こすなど多難な船出となりました。地震および事故でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りいたします。また、行方不明になっている方々全員の発見が早期に実現することをお祈り申し上げます。

今回は、甚大な被害が発生した能登半島地震に関して、その特徴と復興や国および自治体の防災政策への課題について、現時点での私なりの考えを述べたいと思います。

能登半島地震においては、能登半島および富山湾の独特な地形と地震発生時期により、救助・復旧活動は非常に複雑な課題に直面しました。今回の地震に関しては

  • 山がちで海岸線に囲まれ幹線道路が極めて少ない能登半島は、災害発生時に地形的に陸上経由での外部からの支援が届きにくい場所にあること
  • 高齢化の進む人口減少地域で、さらに古い家屋が多い地域であること
  • 能登半島や富山湾に面した地域では海岸線のすぐ近くに市街地や集落があり、それらの地域では地震発生直後に津波が来たこと
  • 地震発生が元旦で、祝日だったこと

が特徴として挙げられます。

今回は、山と海岸線がメインで幹線道路が少なく交通の便が悪い半島の地において、元旦という悪天候になりがちにも関わらず帰省客や観光客が多く、しかも行政機関が閉まっているという最悪の時期に、大規模な地震と津波が発生してしまいました。

日本海側では、比較的水深が浅い領域で地震が発生すると津波を起こす海底の上下変動が大きくなって津波が高くなる傾向があるとのことです。今回は、震源の断層が沿岸に近いために津波が早く到達したとのことで、マグニチュード7級の地震であっても大津波の危険性があるとの専門家による指摘があります。さらに、富山湾沖では「海底地すべり」による津波が起きたようで、これらのことが重なり津波の被害が大きなったと考えられます。また、上述のような能登半島の地形は、災害発生後の支援物資の迅速な供給を非常に困難にしています。

私は、災害行政の専門家から、自然災害が多い日本では、どうしても災害対策が直近に起きた災害と同様の災害にフォーカスしがちになるのが問題であるという意見を聞きました。地震対策として、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震の発生可能性を重視するのは当然ですが、場所・時間別に起こりうるケースを想定するのに関しては、経験に左右されがちな人間の主観が入る状況を脱皮し、AI技術を駆使して機械化を加速させるべきです。その上で、災害時の自衛隊や海上保安庁の部隊派遣に対して最適化を行うべきでしょう。また、各地域でどのような災害が発生する可能性があるのか、地域の課題は何であるのかは、住民の間で共有されるべきでしょう。もちろん、中露朝に悪用されない細心の注意は必要ですが、問題が共有されることにより、住民の危機意識は高めることができます。その意味では、今回、やはり、原発の危険性は改めて立証されたと思います。今すぐ稼動中の原発をすべて停止することは現実的ではないかもしれませんが、これ以上の再稼働はストップし脱原発にかじを切るべきです。再エネと核融合発電の推進に力を入れるべきです。

さて、これまで自然災害が起きる度に、政治家の災害対応に関して、時の与野党間で意見対立が起きていましたが、今回も同様のことが起きています。多くの政治家が被災地入りを見送る中、1月5日に山本太郎れいわ新選組代表が被災地にボランティア入りし、保守系の政治家や言論人を中心に批判が巻き起こりました。一方、岸田首相が地震発生から2週間も経ってようやく現地入りしたことに対しても批判を浴びています。災害対応は場所や時期によって異なるため、唯一解はないはずですが、ここぞとばかりに政敵攻撃キャンペーンを続けるのは生産的ではないと思います(そういう行動は結局自分に跳ね返って来ます)。それよりも、行政の支援体制を今後どうしていくのかを話し合う方が重要であり、その中で政治家の災害対応やボランティア活動のあり方についても冷静に話し合われるべきです。

最後に、立憲民主党の米山隆一氏が、維持が困難な集落に関しては、復興・復旧よりも住民の集団移住を検討するよう訴えたことに、Xでは「強制移住」がトレンド入りし、賛否両論が巻き起こっています。米山氏に批判的な人は、当事者をほったらかしにして放棄と移住を語る神経が許せないと批判していますが、高齢化が進みアクセスが悪い地域を、感情だけで維持できるとは到底思えません。現実問題として、過疎化が進んでいる被災地域に関しては、選択と集中を避けて問題が解決するとは思えず、被災した方々の意思を尊重しながら、総合的に合理的な決定を下す必要があるのではないでしょうか。





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