岸田政権の支持率がさらに低下し、政権の求心力が失われています。岸田内閣の最新の支持率は、前回の調査から3.8ポイント減って、過去最低の26.9%でした。
物価上昇、止まらない円安(そのせいで日本は人口2/3のドイツにGDPが抜かれて世界第4位に転落)、実質賃金の減少、人口減少の加速で、日本経済に全く光が見えない状況で、防衛費増額に向けた予算確保を口実に消費増税など増税が行われるのではないかという懸念が国民の間で強まっています。岸田首相は、どんな分野に対しても官僚が書いたシナリオに沿った政策を発表しているだけであり、イニシアチブの欠如が国民から見透かされ支持を失いました。「増税メガネ」というあだ名が広まると急に所得税減税を検討し始めましたが、検討されている減税の内容が少額かつ一時的なものであることが伝えられると、選挙目当てのバラマキだとの批判の声が強まり、八方塞がりの状況です。
では、岸田首相を変えれば良いかと言えばそうではありません。岸田首相、麻生元首相、鈴木財務相など自民党議員の約三割が世襲議員で、しかも閣僚など党内で出世している議員に関しては世襲比率がさらに高くなっているという、民主主義国家とは言えない前時代的な政治が自民党政権下で横行しています。世襲政治が進行するほど、世襲を生み出すような既得権益擁護の政治経済体制が続くのは自明なので、自民党政権が続く限り日本の没落が止まらなくなることは目に見えています。
それでも政権交代の機運が高まらないのは、国政野党が受け皿になっていないからです。野党第一党の立憲民主党がこの国の非合理的な構造を根本的に変えるような大胆な改革案を提示しているとは全く言えず、安全保障や憲法で明確なビジョンがあるとは思えません。それを象徴するのが泉健太代表です。野党第二党の日本維新の会は、「身を切る改革」と言いながら言っていることとやっていることが一致せず、大阪万博やそれに続くIR(カジノ)計画が大失敗に終わることが目に見えているのに、公費を注入し続けて計画の実現に固執しています。さらに、社会福祉法人乗っ取り疑惑の渦中にある馬場伸幸代表以下所属議員の不祥事が相次ぎ、支持率が低下しています。野党第三党の日本共産党は、党首の志位委員長が20年間以上もその地位にとどまる一方で、委員長の公選を訴えた党員を除名するなど硬直した党の構造が批判を浴び党勢は低迷しています。
私たち進歩党は五大統治機構改革や新しい経済政策など日本を復活させるための本質的な解決策を提示していると自負していますが、今のところ弱小な政治団体の一つであり、今すぐに日本の政治を変える力はありません。そこで、私たちは党外からも意見を求め、多くの人に賛同を得やすいにもかかわらず政治を変える契機となる政策について議論を重ねてきました。結論から言うと、①世襲の禁止、②国政選挙の制度改革、③電子投票の推進について、自民党政権に対して実現を迫ることが国民の間で共有されることが必要であるとの結論で合意しました。
まず、世襲については、世襲議員の存在が世襲でない人が政治家になることへの参入障壁となっています。世襲議員は「権力者」の地位に「不当に有利な条件で」就任しており、法の下の平等(憲法14条)に反していると指摘されています。親族が国会議員や首長である場合、同一選挙区からの立候補は親族の引退後10年間は認めないようにするよう法制化すべきでしょう。
さらに、選挙制度改革については、選挙制度を大きく変えるのは意見集約が大変ですが、衆議院の小選挙区に関して二回投票(決選投票)を導入することはそんなに難しい話ではありません。そもそも、定員一名の選挙区で過半数の得票率を得ない候補が他の候補よりも一票でも多く得票したら無条件に当選する制度はおかしく、フランスのように第一回投票で過半数の得票を得た候補がいない場合は上位二名間で決選投票を行うべきです。これが実現すれば、野党間で候補者調整に頭を悩ます必要もなくなります。比例代表選出の議員に関しては、党の名前で当選したのですから、離党した場合は議員資格がはく奪されるべきです。
そして、最後に投票へのアクセス向上(投票率の向上)、投票の効率化などの点から電子投票の導入をまずは地方議会レベルから推進すべきです。中露の選挙介入などセキュリティ面の問題については、すでに実施が広まっているエストニアなどを参考に対策を強化し、一歩ずつ前に進めるべきでしょう。
上記の施策に関しては、どの党も正面から反対しづらいものだと思いますが、既得権益の維持にしがみつく自民党は決して前向きにはならないでしょう。しかし、1990年代前半に選挙制度改革が最大の焦点になったように国民の間で機運が高まり野党間で合意が生まれれば、自民党政権を終わらせ変革への第一歩を踏み出せるかもしれません。