自民党は、新型コロナウイルス対策の議論を続けるために野党が要求した臨時国会の延長を拒否しました。政府が令和2年度第3次補正予算案と令和3年度予算案の編成作業で忙しくなるからというのが理由だそうですが、現在の政府の最重要課題は何よりも国内での感染を抑えることです。経済対策のために予算を作るので感染抑止策を後回しにするというのは理由になりません。実際のところは菅首相が日本学術会議問題や桜を見る会問題で引き続き野党から追及されるのが嫌がっているからなのでしょうが、悪い意味で安倍政権を継承しているだけなのが菅政権だと呆れかえります。
(罰則を盛り込まないという最大の欠陥があるものの)立憲民主党が今臨時国会中に特措法改正案を提出するとのことで、ようやく多くの野党が特措法改正の必要性を認識しました。しかし、菅政権はこれを無視して感染拡大を抑止するための法整備を行うことなく国会を閉じるのですから、首相が感染拡大を放置しているのは明らかです。
一方、例の3次補正予算案に関しては、自民党の下村政調会長が「需給ギャップが34兆円程度あるのでそれだけの大型の補正予算を組んでほしい」などと大盤振る舞いを政府に要求し、GoToトラベル事業の延長などを含んだ提言を菅首相に提出しました。
菅首相は近視眼的に「少しでも経済活動を抑制すると経済が立ち行かなくなる」、「失業も増える」と思っているので、如何なる経済活動規制策も取りたくないのでしょう。または、二階幹事長ら自民党からの規制反対圧力が強いのかもしれません。首相は「暮らしを守らないと命も守れなくなる」などと言っていますが、30兆も使うならば飲食・旅行・観光業に対して休業補償をして一時休業してもらった方が、感染も抑えられるし失業も抑えられます。これらの産業を守ることと、これらの産業の事業者に営業を続けさせることはイコールではありません。
我々は、飲食・観光・運輸業等に関して、政府による一時的な休業、施設・テナントの第三者への一時的貸し出し、他産業への一時的及び恒久的労働移動の推進を訴えてきました。先日開かれた政府の経済財政諮問会議では柳川範之東大教授が労働移動の重要性を訴えていたようですが、菅首相をはじめとする自民党政権に成長分野やパンデミック下で需要が増えている分野への人材移動支援を積極的に行うという発想が欠けているのは情けない限りです。
第3次補正予算案に関しては、自民党は温室効果ガス削減のための各種技術開発を支援する基金やポストコロナ時代に向けた研究者支援のための基金の創設などを要請していますが、GoToトラベルの延長の他にも、国土強靱化、グリーン・エコノミーの名のもとに原子力の活用などを求めています。また、地方創成臨時交付金の増額も求めています。
これまで、無駄な公共事業を繰り返し、政府債務を膨らましてきた自民党政権です。コロナ対策のはずが国土強靭化になり、国土強靭化に寄与しないような無駄な公共事業に予算が使われかねません。また、グリーン・エコノミーといいながら再エネが普及せず、原発再稼働に多額の予算が投入される可能性がかなりあります。地方創成臨時交付金についても、本来はコロナ感染抑止対策を主導導するはずの国が対応を地方に丸投げしている状態では、国は地方からの財政支援増額要求を拒絶しにくくなるでしょう。
「利益誘導のために無駄な予算が使われ、経済成長につながらず政府債務が増えるだけ」、こんな自民党の利権政治を許してはいけません。