菅政権は21日、新型コロナウイルス感染者急増を踏まえ、GoToキャンペーンの運用見直しを決めました。菅首相は、「4,000万人の利用で感染者数は176人」として、GoToトラベル事業と感染増の関係を否定していましたが、この数字自体の信ぴょう性に疑問があり、欧米の例を見るまでもなく人の移動が感染の拡大を招くのは論理的に考えて至極当たり前のことです。GoTo事業の見直しは当然です。
「コロナ対策が政権の最重要課題」との言葉とは裏腹に、菅首相は感染抑止に消極的な姿勢を取り続けてきました。感染拡大が急増したために軌道修正せざるを得なくなったわけですが、GoToトラベル見直しの対象地域や時期については明らかになっておらず、政府のイニシアチブについても、西村コロナ対策担当大臣は「都道府県知事と連絡を密にしながら対応する」と述べるにとどまっています。このままでは見直しの効果は限定的になるでしょう。
安倍―菅政権のコロナ感染症防止対策は、近視眼的な「経済重視」方針のせいで一貫して後手に回り不十分でした。東京都の緊急事態宣言解除の時期も含めて、第1波の終わりと第2波の始まりの時期に徹底的に感染を抑えておけば良かったものを、それを怠って市中にウイルスが残っている状況で経済活動再開を急いだツケが今来ています。そもそもGoToキャンペーンはコロナ禍が終わった後に始まる予定だったはずです。
危機に陥っている飲食産業と旅行産業を救うことは必要ですが、そのために無理やり需要を喚起しても、それは感染を広げることにつながり途中で挫折するのだから、そのような需要喚起策はやめるべきです。
インバウンドとコロナでの落ち込みで過大になった供給体制は見直さなければならいのは当然で、政府は過剰となったヒトとモノを、コロナ禍が終わり需要が戻るまでどのように有効活用するのかを考えるべきです。過剰となった産業従事者に一時的に他産業に円滑に移動されたり一時休業中のテナントやホテルの施設を一時的に他者に貸し出す有効なスキームを考えるのが政府がやるべきことです。
さらに言えば、GoTo事業は不公平性が指摘されています。旅行業者への援助というのであれば一定の基準を満たした全ての事業者に、政府が定額か定率の宿泊費負担を行う方が公平であり、政府が飲食業者のネット対応や電子決済を進めたいのであれば、設備を導入することが明確に事業者の利益につながる形で政府が支援を行うべきです。
菅政権は飲食業・旅行業支援策を全面的に見直すとともに感染防止対策に全力を尽くすべきです。